ランナー膝(腸脛靱帯炎)

ランナー膝は、正式には腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)といい、ランニングなどで膝を酷使したことによりおこるスポーツ障害の一つです。
ランナー膝になりやすいスポーツとしては、陸上の中▪長距離ランナー、ジョギング、登山、サイクリング、スキーなどをされる方など、膝の曲げ伸ばしを繰り返すことが多い方に発生しやすいものです。

オーバーユース(使いすぎ)や、柔軟性の低下、筋力低下などにより「膝の外側」がズキズキと痛むものです。
また、硬い地面や角度がある路面でのランニング、シューズの底が固いことなども原因のひとつと考えられます。
軽い症状であれば運動を休むことにより痛みはとれますが、我慢して運動を続けていると慢性化してしまい、次第に痛みは増強され、悪化すると歩くだけでも痛むようになることもあります。
このような状態になりますと、日常生活にも影響がでてしまうこともあります。

症状

■運動中や、運動後に膝の外側がズキズキと痛む
■運動中は夢中になっているせいか気にならず、運動後に痛みを感じる
■階段の昇降時や、膝を曲げた時にも痛む
■運動後は脚の筋肉がパンパンに張って痛い
■臀部(お尻)も常に重だるく鈍痛がある
■太ももの後ろ側も引きつり、体重がかかると痛い
■運動を休んでいても一向に改善しない
■激痛となり痛い脚をかばって、身体の他の箇所も痛くなってしまった
など

原因

ランナー膝は、腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)が、大腿骨外側上顆(だいたいこつがいそくじょうか)と擦れることにより、癒着や炎症をおこし痛むものです。

腸脛靱帯は、大腿を覆っている大腿筋膜が、外側面で肥厚してできたものとされています。
腸骨稜(ちょうこつりょう:骨盤の一番上の丸味がかった部分)から大腿骨の外側に沿って垂直に下り、すねの骨である脛骨(けいこつ)にあるガーディ結節に付く長く強靭な靱帯です。
また腸脛靱帯には、大転子付近(「気をつけ」をして、手のひらが当たるあたり)で、前方からは大腿筋膜腸筋が、後方からは大殿筋がついており、股関節や膝関節を動かす際に共に働いています。
このため、大殿筋や大腿筋膜腸筋が固くなってしまうと、腸脛靭帯はこれらに引っ張られて緊張が強くなってしまいます。
また腸頸靭帯は膝を動かすと膝の外側の出っ張り部分である大腿骨外側上顆の上を前後に移動します。

ランナー膝は、腸筋靭帯が硬くなる、アライメントの崩れ、正しいフォームで走れていないなど、何らかの原因のため、繰り返し外側上顆と強く擦れてしまったために、癒着や炎症を起こし痛みが発症してしまうものです。
最初のころは違和感がある程度の弱い痛みですが、ある一定距離を走った時に疼痛が出現するのが特徴です。

対策

■痛みのある時は保存療法が原則となります。
・局所の安静をさせるため原因となる運動を休む、または運動量の調節をする
■筋肉を柔らかく弾力ある状態としてから運動を行い、運動後にはしっかり休ませることが大切です。
・運動前には、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯などをはじめ脚のストレッチをしっかり行う
・ストレッチの後軽くジャンプなどをし、ランニングの前準備となる体操を行う
■運動後にはアイシングを行う
■栄養のある食事・睡眠をよくとり、筋疲労の回復を促進させる
■筋力アップと運動量の調整を行う
■O脚、脛骨外旋変位、脚長差などの調整を行う
■正しいフォームを身につける
■シューズが適切なものか検討する
■サポーターやインソールを使用する
■硬い路面や下り坂などを走ることは避ける
■トラック内や歩道を走る場合、同じ方角のみ走らない
など

 

筋力と見合うように、過度な運動量の調整を行う

運動を始めたばかりの方や、練習量を急激に増やした方などには、今までにかからなかった負荷が急激にかかるため症状が出やすくなります。
痛みを感じた場合は、無理をせず運動量の調整を行ってください。
また、必要な筋力をつけるトレーニングを行うことも大切です。

身体のアライメントの崩れについて

●O脚(膝の内反変形)の方は、膝の外側にある腸脛靱帯が強く引っ張られてしまうため硬くなりやすく、膝の出っ張り部分である大腿骨外側上顆と擦れやすくなってしまいます。
O脚となる原因については、先天性の方や、年齢により膝の変形してしまうこともあります。
また、不良姿勢や生活習慣などにより骨盤が後傾する、踵の傾きがまっすぐでない、筋力や張りに差が生じたために起こるなどさまざまです。

●つま先が内側に向いて走る方も、膝を内側に曲げてしまうため発症しやすくなります。

●腸脛靭帯は大腿の筋膜が肥厚したものですので、脚のバランスが悪い状態でランニングなどを続けていると、腸脛靭帯以外の筋にも影響を及ぼし、殿部や太ももの他の場所まで痛みが出てしまうこともあります。

●O脚だから仕方ないとあきらめず、早めにご相談下さい。

 

ストレッチング・ウォーミングアップ・アイシング

ストレッチング不足により筋肉が固いまま、またはウォーミングアップで筋肉が温まらない状態のままで運動を始めてしまうとランナー膝になりやすくなります。
また、運動後に痛みが出てしまった場合には、アイシングをしっかり行うようにしてください。
アイシングは、ビニールに氷を入れたものや氷のうなどを患部に15分程度つけ炎症を抑えます。
15分以下ですと痛みが増してしまう場合がありますので、冷やす時間が大切となります。
また、湿布は痛み止めであり冷やす効果はありません。湿布はアイシングをした後に貼るとよいでしょう。

傾斜のある路面や、トラック内でのランニング

●道路や歩道でランニングをする際には、同じ方向にばかり走らないことが大切です。
道路は平らではなく、雨水を排水するために道路の中心を高く、外側が低くなっています。
歩道の場合は逆に外側が高くなっていることが多いかと思います。
このため、ランニングをしている際には、身体が常に斜めに傾いている状態となり、同じ方向にばかり負荷がかかってしまい、炎症を起こす原因となってしまいます。
同じ方向ばかりではなく、左右バランスよく走ることを心がけてみてください。

●グランドのトラック内で走る場合でも同じようなことがおこります。
トラックのコーナーを走る場合には、遠心力に負けないように脚の外側に強いストレスがかかってしまいます。
常に同じ方向を走りますと、片方の脚にばかり負担がかかり炎症を起こしやすくなりますので、反対方向でも練習をするようにしてみてください。

硬い路面や靴底が固いシューズで走らない

硬い路面での長時間のランニングや、靴底が固いシューズでは脚への衝撃が大きくなります。
衝撃の少ないシューズなどを選ぶようにしてください。

 

膝の外側の痛み《ランナー膝》はお早めに当院にご相談ください。